特急あずさ、上り。

ここ10年ほど、いや10年以上。夏になる度、同じ湖に通っている。

大したことをしているわけではない。

ほとんど同じ面子が集まり、昼は湖畔のキャンプ場で肉を焼き、日が暮れる頃に温泉に入り、夜は安宿で酒を飲みバタバタと眠る。

1年に1回の行事とはいえ毎年行う効果か、様々な最適化がそこかしこに見える。現地までの道のり、買い出しの場所と準備する物品、会場の設営。誰かが「そろそろ撤収しようか」と言いだせば、レンタルした椅子や机、タープ等の返却、炭の後処理、ゴミの集約が迅速に行われる。そして20分後には車で出発している。遊びに来ているはずなのに、報酬ある仕事のような働きぶりである。

繰り返すことにより嫌が応にも学習が進む一方で、新たな取り組みも出てくる。ある者は自宅で下準備した「あとは焼くだけ」の食べ物を持ち込み、ある者は湯を沸かす道具を購入し暖かな珈琲を淹れる。毎年の変化は微々たるものだが、10年経つと満足度に違いが出てくる位になっている。

自己啓発に関してルーティーンなんて言葉を最近よく聞くのは、こういうことなのかもしれない。繰り返すことによる学習が単純なエラーを減少させ、浮いたエネルギーで行われる創意工夫により効率と成果が高まっていく、ということか。

もっとも、本当に好きなことでなければ、工夫はおろか、続けることなんて出来ないだろうけど。好きを仕事にしろというのは理に適っていると感じる。

では私が続けられている、毎年同じ湖で肉を焼く、それを仕事にするとはーーー

次は終点、新宿。